2019 年 8 月 19 日 |
- MRA外国為替レポート(8月19日号)
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1.この2週間の市場総括
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8月5日月曜日に始まる週の市場は、米中通商摩擦の行方、動静や発
言に神経質となるなか、世界景気への懸念の高まりから依然として
リスク回避的な動きが続いた。
中国は米国からの農産物輸入を停止。また、ドル/人民元相場が1ド
ル7人民元を上回るドル高人民元安となりこれを容認する姿勢を示
した。
トランプ大統領は為替操作として批判。中国を為替操作国に認定し
た。
市場は貿易戦争から通貨戦争への広がりを警戒。その後は人民元相
場の動向に神経質な展開。中国当局が毎日定める人民元相場の基準
レートの水準を巡って、人民元安容認か、人民元安のペースをコン
トロールする姿勢か、で不安感が左右される展開に。
週初に106円60銭で始まったドル円相場は106円割れ。その後は106
円台前半を中心に上下した。
7日水曜日には、ニュージーランド準備銀行、インド中銀、タイ中
銀が利下げ。利下げ幅が想定を上回った。またドイツの鉱工業生産
指数が大幅に悪化。これらを受けて市場の景気懸念・不安感が強ま
った。米10年債利回りは一時1.6%割れに低下する場面もあった。
この間の米国株は大幅下落で割安感が生じたことや、引き続き金融
緩和期待に支えられて底固い値動き。
木曜日には中国の貿易統計が発表され輸出の伸びが強めだったこと、
中国当局が人民元安にブレーキをかける姿勢を示したことからやや
安心感が広がった。
トランプ大統領は再度ドル高への不満を漏らし追加利下げを要求し
た。ドル円相場は106円ちょうど近辺で推移。
ただ週末金曜日に、トランプ大統領が、9月の米中交渉が延期にな
っても構わない、と述べたことで不安感が強まり市場ではリスク回
避が強まった。
円が全面高となりドル円相場は一時105円30銭に下落。週末の引け
は105円60銭台。一方、米10年債利回りは1.74%に小幅上昇して引け
た。米国株は週末に反落。
8月12日に始まる週の市場は乱高下。ドル円相場は105円60銭で始ま
り弱含み。引き続き米中貿易摩擦に対する懸念で市場にリスク回避
が蔓延した状態。
週初の米国株は大幅続落で始まり、日経平均も軟調。20,500円前後
で低迷して20,000円をかろうじて維持する状況が続いた。
安全資産である米国債への資金流入が続き米長期金利は大幅低下。
週央には中国やドイツの弱い経済指標で、米10年債利回りは一時
1.50%を割り込んだ。
米国株は米国USTR(通商代表部)が対中関税の一部延期を発表した
ことで反発する場面もあったが、米2年債利回りを10年債利回りが
下回る逆イールドとなったことが景気後退への不安感を煽り急落。
その後は米中通商問題への懸念がやや緩和したことや、景気対策へ
の期待などから株価は落ち着き、長期金利の低下も一服した。
ドル円相場は週前半に105円ちょうどに迫る場面もあったが、その
後は持ち直し、106円割れでは底固い展開となった。週末の引けは
106円40銭。
ユーロ円相場は108円台前半で始まり一時119円台に上昇したが反落。
概ね118円ちょうどを中心とした値動きとなった。日経平均の金曜
日引けは20,350円。
12日月曜日の東京市場は祝日で休場。アジア時間のドル円相場は
105円50銭近辺、ユーロドル相場は1.12ちょうど近辺で推移。
米中貿易摩擦への懸念は続きリスク回避心理が根強い状況が続いた。
香港では政府への抗議デモが拡大し香港国際空港が全面停止。
またアルゼンチンの大統領予備選挙で左派が優勢となったことでポ
ピュリズム懸念から通貨・アルゼンチンペソが急落したことなども
心理を悪化した。
欧州市場に入ると、ドイツのIFO経済研究所が米中貿易摩擦を主因
に世界的に景気見通しが悪化しているとの調査結果を明らかにした。
同研究所は世界貿易の著しい伸び減速を予想。ユーロは対ドルで
1.1160台、対円で117円50銭台に下落。
米国市場では株価が大幅続落。指数はいずれも大きく下落した。米
長期金利は低下し、2年債利回りは1.58%、10年債利回りは1.64%に
低下。
ドル円相場は105円ちょうどに接近し、引けは105円20銭〜30銭。
ユーロはその後持ち直し、ユーロドル相場は1.1210台、ユーロ円相
場は118円近辺に戻して引けた。
13日火曜日の東京市場では3連休明けの日経平均が20,400円割れで
大幅安寄り。ただその後は底固くじりじりと上昇して20,450円近辺
で引けた。
ドル円相場は105円30銭近辺で始まり50銭近辺に小幅上昇したが反
落し105円10銭〜20銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.12ちょうど
を挟んで上下。ユーロ円相場も118円ちょうどを中心に上下。
海外市場に入る米国USTR(通商代表部)が対中関税第4弾、3,000億
ドルのうち一部の延期を発表。スマホやゲーム機、衣類などに対す
る関税を9月1日から12月15日に延期した。クリスマス商戦への悪影
響を考慮したもの。
これを好感して米国株は大幅高。米長期金利は上昇し、2年債利回
りは1.67%、10年債利回りは1.70%。ドル円相場は一時107円目前ま
で急騰。ユーロ円相場は119円60銭に。
ただその勢いは長くは続かず、ドル円相場は106円60銭〜70銭、
ユーロ円相場は119円ちょうど〜20銭での推移となった。ユーロド
ル相場は1.1170〜90。
発表された米国の消費者物価指数(7月)は前年同月比+1.8%、コア
指数で+2.2%とともに前月から上昇率がやや加速した。
一方、欧州で発表されたドイツZEW景況感指数(8月)は期待指数が
▲44.1と前月▲24.5から大幅に悪化した。
14日水曜日の東京市場のドル円相場は106円70銭で始まり上値の重
い展開で軟調。106円40銭中心とするもみ合いへ。ユーロ円相場も
119円20銭で始まりその後は119円を割り込むなど上値重く、119円
ちょうど中心のもみ合い。
日経平均は米国株の大幅高やドル円相場の持ち直しを好感して
20,700円で高寄りしたが、その後は上値重く、20,600円を割り込む
場面もあった。引けは20,650円近辺。
中国で発表された7月の主要経済指標はいずれも弱かった。
小売売上高は前年同月比+7.6%と前月の+8.8%から大幅減速。工業生
産は同+4.8%と+6.8%から大きく鈍化して17年ぶりの低い伸びとなっ
た。
都市部固定資産投資は+5.7%と前月+5.8%から小幅鈍化。失業率は前
月の5.1%から5.3%に上昇した。欧州ではGDPが発表されドイツの4-6
月期GDPが前期比▲0.1%とマイナス成長を示した。
市場では景気後退懸念が強まりリスク回避から米国債に資金が流入。
米2年債利回りは1.58%へ、10年債利回りは1.57%へ急低下し、一時2
年債利回りを10年債利回りがわずかながら下回る逆イールドとなっ
た。
このこと自体がさらに景気悪化懸念を煽り米国株は大幅安。NYダウ
は800ドルもの急落、3%の下落となった。ドイツDAX指数も2%の大幅
下落。
為替市場では円高とともにドルも堅調。ユーロ円相場は117円80銭
〜90銭に下落し118円ちょうど中心に上下。ユーロドル相場も
1.1140〜50にユーロ安ドル高。ドル円相場も円高となったが、
106円割れでは底固く、105円90銭〜106円ちょうどでの引け。
15日木曜日の東京市場のドル円相場は105円90銭中心に推移。ユー
ロ円相場は118円ちょうど近辺。
日経平均は米国株急落を受けて20,200円で大幅安寄り。ただその後
は底固く20,300円〜400円で推移して引けは20,400円近辺。
為替市場では東京時間午後15時過ぎに、とくに材料のないなか急速
に円安に振れた。ドル円相場は106円70銭に、ユーロ円相場は119円
ちょうど近辺に瞬間的に上昇。発注ミスとの見方や、円高を見越し
た円買いポジションの手仕舞い・円売り戻しが、薄商いのなか相場
を大きく動かしたとの見方も。
その後はすぐに円高へ揺り戻し、ドル円相場は105円70銭へ、ユー
ロ円相場は118円へ反落した。
中国は対米報復措置をとらざるを得ないとのスタンスを表明。欧州
ではECBのメンバーであるフィンランド中銀総裁が、9月にインパク
トのある重要な意味を持つ緩和策を打ち出す必要がある、と述べた。
ユーロドル相場は1.1150から1.11ちょうど近辺に下落。ユーロ円相
場は118円50銭に戻していたが117円70銭に下落した。ドル円相場は
106円10銭〜30銭で上下。
米国で発表されたNY連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀製
造業景気指数(ともに8月)は強め。小売売上高(7月)も前月比
+0.7%と前月の+0.4%から伸びが加速して予想よりも強い数字だった。
一方、鉱工業生産(同)は▲0.2%と前月の+0.4%から減少に転じて
弱い数字に。設備稼働率も77.5%と前月の77.9%から低下した。
米国株は個人消費の強さに落ち着きを取り戻して小幅反発。ただ生
産が弱めだったこともあり反発は鈍かった。
こうした米国株の動向に反して米国債利回りは急低下。2年債利回
りは1.47%、10年債利回りは一時1.47%をつけ1.50%へ。30年債利回
りが史上初の2%割れとなった。
ドル円相場は106円ちょうどを挟んだ値動きとなり106円10銭で取引
を終えた。ユーロ円相場は117円80銭〜90銭。
16日金曜日の東京市場は総じて小動き。ドル円相場は106円10銭を
中心に上下、ユーロ円相場は117円80銭〜90銭で上下。ユーロは対
ドルで軟調。1.1110から1.1070へ小幅安。
日経平均は20,300円で小幅安寄りの後は底固く、20,400円〜450円
で上下。引けはやや押して20,300円台後半。
海外市場に入ると、欧州の有力週刊誌シュピーゲルが、ドイツ政府
はリセッション入りなら財政赤字覚悟で対応する、と報じたことか
らリスク回避がやや緩和。ドル円相場は106円50銭に、ユーロ円相
場は118円ちょうど近辺に上昇。ユーロドル相場は1.11台に上昇し
た。
またトランプ大統領が、米中春陽は近く電話で貿易問題を協議する、
と述べたこともリスク回避を緩和した。米国株は上昇。米長期金利
も反発して2年債利回りは1.49%、10年債利回りは1.56%。2年−10
年の逆イールドは解消した。
ドル円相場は106円30銭を中心に上下して引けは106円30銭〜40銭。
ユーロ円相場は117円90銭〜118円ちょうど。
発表された米国の住宅着工(7月)は季節調整済み年率換算で1,191
千戸と前月1,241千戸から減少。ミシガン大学消費者信頼感指数(8
月)は92.1と前月98.4から悪化して予想を下回った。
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