商品市場/外国為替レポートバックナンバー

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「2019年貴金属価格見通し〜高まるリスクと利上げ打ち止めで上 昇」

「企業決算を受けた株価上昇で総じて堅調」

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1.商品市況概況
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◆昨日の商品市場(全体)の総括
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「企業決算を受けた株価上昇で総じて堅調」

昨日の商品市場は総じて堅調な推移となった。英メイ首相の不信任
案が否決されたことや、GSの決算が良好で株価を押し上げ、市場参
加者のリスクテイク意欲が回復したことが背景。ただし最も上昇し
たのは材木、次いで欧州排出権だった。


木材価格は中国に対する制裁強化や北米の貿易新協定妥結以降低迷
(昨年のピーク時比▲44.6%)しており、カナダWest Fraster社は
ブリティッシュ・コロンビア州の生産を3週間、一時的に停止する
と発表したことが材料視されたようだ。

欧州排出権は、2018年12月17日に大統領並びに議会代表によって暫
定合意に至ったEU内の自動車やバン向けの排出ガ規制強化案が加盟
国で承認されたことが材料となった。

景気拡大の最終局面では環境規制とそれに関連するビジネスが過熱
しやすい。これはリーマンショック前にもみられた動きである。


昨日は中国の不動産統計が発表されたが、12月の中国主要70都市の
新築住宅価格は前月比+0.77%(前月+0.98%)と伸びが鈍化したもの
の前月比プラスを維持、前年比で+9.7%(+9.3%)と中国政府による
不動産規制にも関わらず、住宅セクターがまだ堅調であることが確
認されたことも、リスク資産の買い安心感を広げたようだ。

今後の商品市場動向は、1.景気自体、2.米中貿易戦争の行方、3.
Brexitの行方、4.これらを考慮したFRBの金融政策動向、に焦点が
当たっている。

1.の景気は循環的な減速が見込まれるため自然体では「下りのエ
スカレーターに乗っている」状態といえ、何もしなければ景気循環
銘柄価格に下押し圧力が掛かりやすい。

2.の米中貿易摩擦の問題は、ライトハイザー氏がコメントしてい
るように「ほとんど進捗していない」のが事実の可能性が高く、3
月に制裁回避となるかどうかはまだ微妙な状態で、経済合理性の観
点から何らかの妥決に至る、というのは難しいのかもしれない。

実際、米検察はファーウェイを企業情報の窃盗疑惑で捜査を開始し
たと報じられているし、中国で拘束されているカナダ人には死刑判
決が言い渡されている(注:ただしこのカナダ人は麻薬の密輸の容
疑がかけられている。中国はアヘン戦争の経験から麻薬に対しては
敏感であるとされる。なお、アジア諸国では麻薬の密輸、場合によ
っては保持だけでも死刑としている国が多い)。

両国の対立はこれら本格化する、とみておくべきだろう。問題が解
決すればリスク資産価格の上昇要因となるが、ならなければ下落要
因となるが、どちらかといえば下落要因に転じる可能性を意識した
ほうが良いかもしれない。

3.は非常に不透明になってきた。その影響の大きさから最終的に
は何らかの合意に至るというのが市場の考え方であるが、リーマン
ショックの時も影響が大きいため何らかの妥結に至る、と期待され
ていたがそのようにならなかったことを忘れてはならない。

特に、ロンドン・シティの役割の大陸欧州への移管は、まだ実際に
稼働していないため正しく稼働するかどうか分からない。通常、新
しいシステムを用いるときは新旧の体制を並行稼働して動作確認を
するものだが、それはまだ実際には行われていない。いざ稼働、と
なった場合にトラブルが発生することもあり得る。

4.はこれらの状況を考えると、緩和的なスタンスに転じ利上げが
あってもあと1回程度と予想される。しかし昨日のベージュブック
を見るにやや弱さも見られるが総じて雇用は堅調、緩やかな景気拡
大の継続を確認する内容だった。

場合によるとFOMCでの想定通り2回利上げが行われる可能性もあり、
その場合にはインフレ系商品価格を下押ししよう(詳しくは本日の
MRA's Eyeをご参照下さい)。今のところ市場は利上げ無しを織り
込んでいるため、2回利上げがあったときのインフレ資産価格への
影響は小さくない。


本日は予定されている材料ではフィラデルフィア連銀指数に注目し
ている。市場予想は9.5(前月9.1)と改善見込みであり、景気循環
系商品価格の押し上げ要因となるだろう。

ただし上記の通りBrexitの問題が残存する中で市場参加者のリスク
選好が急速に回復するとは考え難く総じて方向感に掛け、レンジ
ワークを継続するとみる。


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◆昨日の商品市場(個別)の総括
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---≪エネルギー≫---

昨日の原油価格は上昇した。メイ首相の不信任案が否決されたこと
やGSの好決算を受けた株価上昇で市場参加者のリスク選好が強まっ
たため。

なお、昨日米石油統計が発表され、原油在庫が予想以上の減少にな
ったことが確認された。しかし原油の増産が始まっていることが確
認されたこと、石油製品在庫の積み上がり並びに需要の減速が確認
されたため、上昇余地は限定された。

なお、昨日の上昇でテクニカルな抵抗線だった50日移動平均線を
WTI(52ドル)・Brent(61ドル)とも上回ったがアジアのオープニ
ングではこの水準を固める動き(下値余地を探る動き)となってい
る。

この水準を維持できると各々10ドル程度価格レンジが切り上がるこ
とになるため、このラインを攻防戦としてもみ合い推移することが
予想される。

原油価格は一旦上昇余地を探る動きになると考える。昨年からの下
落は循環的な景気の減速に、米国の中国制裁が重なり、景気の先行
きが懸念されての下落だったと考えられるが、それを受けた株価の
急落などもあって11月末、12月末を意識したファンドの売りが嵩ん
だことでオーバーセルの状態になったことから、1月からOPECの減
産が始まることもあり、買戻しが入りやすいため。

また、昨年後半のリスク資産価格下落の主因の1つとなった米国の
利上げも、そのペースが鈍化すると期待されていることも金融面で
価格を支えると考える。

とはいえ、米中貿易戦争の長期化や北米の増産がQ119も緩やかに増
加すると予想されること、年後半にかけて米国の減税効果が剥落す
ることから上値も重く、本格的に上昇に転じるのは2020年以降のイ
ンドの人口ボーナス期入り以降となるのではないか。

足元の景気循環銘柄価格下落の主因の1つである米中貿易戦争であ
るが、どのように決着(長期的な決着)するか現時点で誰も見通す
ことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れ
られることを承諾します」というまで継続すると予想する。

そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的
長い間景気にマイナスに作用すると予想されることから、原油を始
めとする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。

短期的には投機筋動向が価格に影響を与えやすいが、12月18日付の
WTIの投機筋ポジションは、ロングが前週比▲1,869枚の502,715枚、
ショートが▲1,971枚の193,107枚、Brentは12月18日付でロングが
▲967枚の260,466枚、ショートは▲13,370枚の108,466枚となって
いる。

なお、政府閉鎖の影響で12月18日以降、データは更新されていない。

中長期的には中国の人口ボーナス期が2030年頃まで続く事、2020年
頃からはインドも人口ボーナス期に入り需要の増加が見込まれるこ
とから構造的に需要増加が見込めるため強気である。

なお、EVが普及して原油需要は2035年〜2040年頃にピークを迎える
との見方が市場のコンセンサスとなりつつあるが、財政的なサポー
トが必要なEVは、市場の期待するようなペースで拡大するとは見て
いない。

また、EV化が進むにつれて同時に発生する、軽量化目的の樹脂利用
(化学製品向け需要の増加)も期待できること、液体燃料は保存や
輸送の観点からみて依然割安であり、アフリカなどの新興国では引
き続き利用されると予想されることから、2035年に「需要の伸びは
鈍化」するものの、減少に転じると判断するのは早計と見る。

実際に減少に転じるのは世界的に人口伸びの鈍化が実感される頃
(2050年頃)になるのではないか。

この見通しの上昇リスクを現物の需要・供給に分けてみてみると、
需要面は原発事故などの突発事象で他のエネルギーを原油で代替せ
ざるを得なくなった時がこれに当たるが、これはなかなか想定し難
い。

供給面は、以下のようなものが上昇リスクと考えられる。

1.中東情勢の悪化

2.上流部門投資低迷の影響

1.の中東情勢はより混迷を極めている。年初は、「米国+イスラエ
ル+サウジ」vs「イラン+ロシア」という構図だったが、米国の大使
館移転や、サウジアラビア ムハンマド皇太子のジャーナリスト殺
害疑惑などで、米国・サウジアラビアの関係がギクシャクしてきて
いる。

OPECもカタールが脱退、反サウジアラビアの姿勢を強め、イランも
OPECの継続についてやや懐疑的な見方を示すなど、「景気後退局
面・需要減速局面での産油国のエゴ」がむき出しになりつつある。

通常であれば増産攻勢が強まり、価格の下落要因となりそうだが、
軍事的な衝突やサウジ対する制裁やそれに対する報復としての原油
輸出停止も、ムハンマド皇太子が今のポジションにいる以上ない話
ではない。

仮に、イランやサウジが軍事的に衝突した場合や、米国のイランに
対する制裁が貫徹され、本当にイランが原油輸出できなくなるよう
な場合には、ホルムズ海峡封鎖の可能性が高まるため、原油価格が
100ドルを超えても何ら不思議はない。

金融面・政策面では、以下の要因が上昇リスクとなる。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

4.米中貿易戦争が終結する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼ
ゼロになった。

2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が
出高まっている。FOMCメンバーもハト派的な論調が増えてきており、
2019年以降の利上げペースは当初予想よりも減速すると予想される。

4.は短期的に貿易分野で米中が合意することはあるかもしれない
が、長期的な覇権を競う争いであるためそう簡単に終息するとは思
えない。

下落リスクは需要面は何かしらの信用リスクが顕在化することが材
料となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.米国の中国制裁強化による中国の財政状況悪化ないしは地方政
府のデフォルト

3.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

4.北朝鮮戦争の開戦や中東情勢悪化を受けたリスク回避の動きの
強まり

5.株価の調整

6.トランプ政権の保護主義政策推進

7.新興国の財政状況悪化ないしはデフォルト

1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェク
トを見直すなど緩やかに調整が起きているが、足元は米国の制裁強
化の影響でむしろこちらにブレーキを踏む動きになっている。

2.は構造的な中国の経済成長減速に、米国の制裁強化が重なって
いるためデフォルトまでは行かなくとも地方政府の財政状況が悪化
し、地域経済に影響を与える可能性は低くなくなっている。

3.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・
極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019
年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続が
リスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸
国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視
できない。

5.は既に顕在化した。株価下落のきっかけは7月のFOMCでの利上げ
以降の金利上昇で、米2年-5年金利が逆転したのを「景気後退」と
株式市場参加者が判断、過剰に反応し、ファンドの閉鎖も伴いなが
らポジション解消が進んでいる。今や最大の下落要因となっている。


6.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探
る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」の
ポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得る
まで関税問題は解決しない。


7.は米国の利上げ継続などで新興国からの資金流出が継続すると、
現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億
ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしている
と考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨
建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統
領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、
この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終
的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエ
ラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷
山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊
するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。

供給面は、以下の要因が主な下落リスクシナリオだ。

1.北米の増産加速

2.OPECの結束の揺らぎ

1.は米国のパイプラインのキャパシティ問題もあり、増産ペース
は鈍化している。原油価格が採算ラインに乗ってから増産が始まる
までの時間差や新しいパイプラインの稼働時期を考えると、今年か
ら再び増産ペースが加速すると予想される。

2.は、12月のOPEC総会の結果を見てもわかるように、出口を模索
する状態にはない。

ムハンマド皇太子の強硬姿勢に嫌気が指し、財政状況も厳しくなっ
たカタールがOPEC脱退を決定するなど、結束にはほころびが出始め
ている。イランの減産分をサウジが肩代わりするなど、対立国の利
害関係が対立しており、イランの脱退で生産調整が機能しなくなる
可能性もある

石炭価格はじりじりと水準を切り下げる展開となっている。北朝鮮
への制裁強化や中国の環境を意識した減産の影響で需給がタイト化
し、価格水準が大きく切り上がったが、現在の供給環境を所与のも
のとしたとき、価格動向を左右するのはやはり景況感、すなわち需
要動向である。

最大消費国である中国の景況感は悪化しており、製造業PMIは50の
閾値を下回った。このような需要鈍化局面では石炭価格には下押し
圧力が掛かりやすい。また、北東アジアが暖冬であることも価格下
落圧力となっている。当面、100ドルを上値に意識される展開が続
くことになるだろう。

なお、米国と北朝鮮の交渉が進捗し、制裁が緩和された場合にはさ
らに価格は下押しされることになると予想される。しかし、北朝鮮
が核開発を継続している可能性が高い中、制裁緩和の可能性は高く
ない。

それよりは、米中貿易戦争の激化で中国が米国に従わない、親北傾
向を強める韓国が非合法に北朝鮮に対する制裁を緩和する、という
展開はあり得るだろう。2019年のびっくり予想ではないが、韓国と
北朝鮮が統合し、朝鮮半島が一気に親中国に傾く、というシナリオ
もなくはない。

ただし、環境規制強化の世界的な流れを受けて、上流部門投資が抑
制される見通しであることに伴う供給制限から下値余地も限定され
ると考える。この場合、石炭先物の期先の価格が目安として参考に
なるが、85ドル程度が下値の目途になるのではないか。


---≪LME非鉄金属≫---

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。GSの決算を受けて
株価が上昇したことや、最大消費国である中国の新築住宅価格が発
表され、政府の規制強化にも関わらず住宅価格が上昇していること
や、一部の都市で住宅投資規制を緩和する動きがみられていること
も価格を押し上げた。

昨日発表された中国の不動産統計は、12月の中国主要70都市の新築
住宅価格は前月比+0.77%(前月+0.98%)と伸びが鈍化したものの前
月比プラスを維持、前年比で+9.7%(+9.3%)と中国政府による不動
産規制にも関わらず、住宅セクターがまだ堅調であることが確認さ
れた。

また、中国人民銀行の集計では2018年の新規不動産融資は
6兆4,500億元で、新規融資全体の39.9%(前年41.1%)からやや低下
した。このことは中国の住宅ブームが徐々に鎮静化に向かっている
ことを示唆している。

日本の歴史を見てもわかるように、人口動態のピークアウトは住宅
セクターの鎮静化につながりやすく、今後はこれまで作ってきたバ
ブルをいかに混乱なく潰せるかどうかである。

非鉄金属価格は米中の景気刺激策と、昨年後半の売られすぎからの
反動で上昇すると見ている。夏頃までは原油減産や米長期金利の上
昇一服から実質金利に低下圧力が掛かりやすいことも価格を押し上
げるだろう。2020年以降はインドの人口ボーナス期入りによる構造
的需要増加で上昇すると考えている。

中国人民銀行は1月中の1.0%の預金準備率引き下げを発表したほか、
中国国営の中国鉄路総公司は2019年の鉄道網整備を6,800キロ(1,2
50億ドル)とし、2018年の4,683キロから45.2%増加させると発表し
た。

しかし、米中貿易戦争がそう簡単に解決しないとみられることや、
欧州の政情混乱(ドイツやイタリアの政治混乱、ハードBrexitな
ど)、秋口にかけては米減税効果が一巡することから、春・秋に一
時下値余地を探る動きになるのではないか。

また、米中貿易戦争は一時的な緩和はあるものの今後も継続する見
込みであることから、特に上期中は下振れは小さくないと考える。

足元の景気循環銘柄価格下落の主因の1つである米中貿易戦争であ
るが、どのように決着(長期的な決着)するか現時点で誰も見通す
ことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れ
られることを承諾します」というまで継続すると予想する。

そして、それほど短期決戦にはならないと考えられるため、比較的
長い間景気にマイナスに作用することになるため、非鉄金属を始め
とする景気循環系商品価格の下押し要因となるだろう。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益
は、年初来ベースで前年+11.8%の6兆1,169億円(1-10月期+13.6%の
5兆5,212億元)、11月は▲1.8%の5,948億円(前月+3.6%の5,480億
元)と減速が鮮明となっている。構造的・循環的な景気減速に加え、
米国の制裁の影響が顕在化していることは間違いなさそうだ。

なお、構造的に工業金属需要が増加し、価格が上昇するのはおそら
く次の需要のけん引役となるインドが人口ボーナス期入りする来年
以降になるとみており長期的には強気の見通しである。

短期的には投機筋の動向が重要になるが、1月4日付のLMEポジショ
ンには跛行性がみられたが、総じて軟調だった。

銅、鉛、アルミはロング・ショートともポジションを減らしたがよ
りロングの解消圧力が強かったためネtット買い越しは減少。ニッ
ケル・錫はともにポジションを増加させたがロングの増加が大きく
ネット買い越し幅を拡大している。

亜鉛はロング・ショートとも増加したが、ショートの増加が大きか
ったためネット買い越し幅を縮小させた。背景には2019年の増産見
通しがあると考えられる。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は昨年12月21日に80.3億ド
ルの最低値を付け先週は105.6億ドルまで回復したが、1月4日時点
では94.4億ドルまで買い越し額を縮小させた(前週比▲10.6%)。
一方買い越し枚数もトン数換算ベースで一時2,965千トンまで減少
したが、28日時点では3,405千トンまで回復、その後4日時点では3,
105千トンまで減少している(▲7.5%)。

金額ベースの買い越し額減少幅が大きいことから、投機の売り以上
に下落圧力が強かったことを示している。

中長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス
期は2030年頃まで続く事、2020年頃からインドが人口ボーナス期に
入ることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、強気の
スタンスを崩していない。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであ
ることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れる
かは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プ
ロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道
案件も先送りとなった。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み
増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているの
は明らかである。

恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行す
ることはないだろう。そんな中、10月の米中首脳会議で安倍首相は
透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束し
た。

中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を
欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国を
たたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。

この見通しの上昇リスクは需要面では、

1.中国の景気刺激策の実施

2.環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、
EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80
キロ/台が使われる)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

3.トランプ政権のインフラ投資計画実施

4.米中貿易戦争が終結する場合

などが考えられる。

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すに
は内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セ
クターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

ただ、既に預金準備率の引き下げは実施されているが地方政府財政
も逼迫していることから支出の拡大となる公共投資の規模拡大は限
定されると予想される。

2.の環境規制強化の流れの中でのEVブームは、若干鎮静化してい
る。EV普及のためには補助金負担は必須であり、景気が減速する中
ではなかなか積極的にEV政策を推し進められないことが背景にある。
よって、市場が期待しているほどのペースで普及するとは見ていな
い。

3.はそもそも大きな政府を目指している民主党の理解が得られや
すいため、メキシコとの壁は作らないと思うが一部実施される可能
性は高まった。

4.は短期的に貿易分野で米中が合意することはあるかもしれない
が、長期的な覇権を競う争いであるためそう簡単に終息するとは思
えない。

供給面は個別性が強いが、以下が上昇リスク要因として挙げられる。

1.大規模鉱山の減少に伴う安価な資源確保環境の悪化(コストを
掛ければ採掘できる。リサイクルの充実は必須)

2.中国の環境規制強化に伴う減産の継続

3.石炭価格上昇による生産コスト(電力コスト)の高止まり

金融面・政策面では、以下が主な上昇リスク要因だ。

1.米金融規制緩和

2.米景気拡大ペースの鈍化に伴う利上げペースの減速

3.2.に限らず長期金利が日欧の低金利政策の継続で低下する場合

1.は中間選挙で民主党が下院を押さえたため、その可能性はほぼ
ゼロになった。

2.は足元の統計減速で、来年の利上げペースが鈍化する可能性が
出てきた。FRBパウエル議長を含むFOMCメンバーもハト派に傾きつ
つある。

下落リスクは多く、以下があげられるが主に信用リスクの拡大が要
因の軸となる。

1.中国の金融市場・住宅市場正常化推進加速

2.地政学的リスク(特に需要面では欧州の混乱)の顕在化

3.株価の調整

4.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

5.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト


1.の中国の金融市場・住宅市場正常化は不採算の国家プロジェク
トを見直すなど緩やかに調整が起きているが、足元は米国の制裁強
化の影響でむしろこちらにブレーキを踏む動きになっている。

2.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・
極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019
年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続が
リスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸
国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視
できない。

3.は既に顕在化した。株価下落のきっかけは7月のFOMCでの利上げ
以降の金利上昇で、米2年-5年金利が逆転したのを「景気後退」と
株式市場参加者が判断、過剰に反応し、ファンドの閉鎖も伴いなが
らポジション解消が進んでいる。今や最大の下落要因となっている。

4.は同盟国に対しては事前の期待通り常識的な落としどころを探
る動きになりつつある。しかし大統領選挙まで「戦う大統領」の
ポーズを示しておかなければならないため、何かしらの果実を得る
まで関税問題は解決しないだろう。

5.は米国の利上げ継続などで新興国からの資金流出が継続すると、
現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに対して622億
ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)をしている
と考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズエラの外貨
建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統
領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、
この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終
的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエ
ラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷
山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊
するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。


---≪鉄鋼原料≫---

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップ価格は上昇、原料炭スワップ先物
は下落、鉄鋼製品価格は下落した。

鉄鋼価格は軟調。中国政府の対策実施方針はあるものの中国正月以
降の相場に強気になれない市場参加者がまだ多く、軟調な推移とな
っている。

鉄鉱石価格は現状水準で推移すると考える。

中国政府が景気刺激のために金融緩和を実施していること、冬場の
鉄鋼生産抑制継続による鉄鋼製品価格の高止まりが、投機的な観点
での鉄鉱石買いを誘うと考えられること、季節的に輸入鉱石の需要
期に当たること、環境面を意識した高品位鉱選好の動きの継続が価
格を押し上げると見る。

一方で、中期的には鉄鋼製品生産の減速で鉄鋼向け鉄鉱石需要の減
速が予想されることが、価格の上値を押さえると考えられるため。

主要生産地である唐山市の直近の鉄鋼生産者稼働率は74.9%と例年
の82.7%を下回っている。


中国人民銀行は1月中の1.0%の預金準備率引き下げを発表したほか、
中国国営の中国鉄路総公司は2019年の鉄道網整備を6,800キロ
(1,250億ドル)とし、2018年の4,683キロから45.2%増加させると
発表した。

ただし、中国の鉄鋼業の景況感は悪化している。12月の中国鉄鋼業
PMIは44.2(前月45.2)と低迷。特に生産削減方針を受けて生産の
減少(47.6→39.1)が顕著だ。新規受注は国内向けがやや回復(35.
4→39.5)したものの、輸出新規受注が大幅に減速(43.2→35.8)
しており、地合いは弱い。

実際、中国の2018年の鉄鉱石輸入は10億6,000万トンと8年ぶりの前
年割れとなっている。

一方、完成品在庫(58.8→45.9)、原材料在庫(54.8→47.7)と在
庫水準が低下していることが、鉄鋼製品・鉄鋼原料価格を下支えし
よう。

こうした国内外の減速による景況感の悪化、とくに中小企業の景況
感悪化を回避するために中国政府は減税や公共投資実施などの対策
を行う方針を、中央経済工作会議で示した。

ただし、同時に地方政府の財政状況も厳しく、公共投資の規模大幅
拡大も困難であるため、恐らく金融緩和程度に止まり、鉄鋼製品、
鉄鉱石価格の下支え要因にはなるが、価格を大きく押し上げるほど
の効果はないと見る。

なお、米中貿易戦争がどのように決着するか、現時点で誰も見通す
ことはできないが、恐らく米国は「中国が西側の仕組みに組み入れ
られることを承諾します」というまで継続すると予想する。

そして、それほど短期決戦にはならない(長期的な解決には時間が
かかる)と考えられるため、比較的長い間景気にマイナスに作用す
ることになるため、非鉄金属を始めとする景気循環系商品価格の下
押し要因となるだろう。

そしてこうした制裁の影響は顕在化しつつある。中国工業部門利益
は、年初来ベースで前年+11.8%の6兆1,169億円(1-10月期+13.6%の
5兆5,212億元)、11月は▲1.8%の5,948億円(前月+3.6%の5,480億
元)と減速が鮮明となっている。構造的・循環的な景気減速に加え、
米国の制裁の影響が顕在化していることは間違いなさそうだ。

結局、工業金属の最大消費国である中国への制裁は緩和はすれども
継続する見込みであるため、工業金属需要にとってマイナスに作用
することは避けえない。

鉄鋼製品在庫は前週比+39.9万トンの873.6万トン(過去5年平均
1,015万トン)であり例年よりも在庫水準は低く、鉄鋼製品価格は
例年よりも高い水準を維持しそうだ。このことは鉄鉱石価格の下支
え要因となる。

直近の統計では、鉄鉱石在庫が前週比+5万トンの1億4,060万トン、
(過去5年平均1億1,067万トン)、在庫日数は変わらずの33.4日
(過去5年平均30.7日)と例年の水準を上回った。粗鋼生産が駆け
込み需要が剥落したためと考えられ、鉄鉱石価格を下押し要因とな
る。

長期的な見通しは人口動態が重要になるが、中国の人口ボーナス期
は2030年頃まで続く事、2020年からインドが人口ボーナス期に入る
見込みであることから構造的な需要増加はまだ継続すると見ており、
強気である。

なお、アジア開発銀行は2016年〜2030年のアジアのインフラ投資規
模は26兆ドル(3,000兆円、年間1兆7,000億円)に達すると試算し
ている。

一帯一路構想は「中国の周辺国の実効支配」を目的とするものであ
ることは明確であり、このまま世界中がすんなりこれを受け入れる
かは微妙だ。実際パキスタン、ネパール、ミャンマーの水力発電プ
ロジェクトが相次いでキャンセルになっている。マレーシアの鉄道
案件も先送りとなった。

また、2018年の軍事費も前年比+8.1%の1兆1,069億元と大幅に積み
増しされており、中国が軍事的に周辺国を支配しようとしているの
は明らかである。

恐らく、市場が期待していたほどのペースで一帯一路政策が進行す
ることはないだろう。そんな中、10月の米中首脳会議で安倍首相は
透明性を高めることなどを前提に、一帯一路構想への協力を約束し
た。

中国の資金繰りが悪化している可能性は高く、中国は日本の支援を
欲しがっている、とも考えられる。軍事衝突を回避しつつ、中国を
たたく戦略を採用している米国がこれを看過するかは疑問である。

上昇リスクについては、以下のようなものが考えられる。

1.中国の景気刺激策の実施

2.一帯一路構想が市場予想を上回るペースで実施される場合

3.米国のインフラ投資計画が実際に実施される場合

1.は米国の経済制裁を受けて、構造的な景気の軟着陸を目指すに
は内需刺激しかなくなっており、預金準備率の引き下げや、住宅セ
クターの再度の過熱を容認する可能性は排除できなくなっている。

ただ、既に預金準備率の引き下げは実施されているが地方政府財政
も逼迫していることから支出の拡大となる公共投資の規模拡大は限
定されると予想される。

2.はそのプロジェクトの質(たち)の悪さから導入を見送る国が
増えており、中国自体の資金繰りの問題もあって以前ほど高いリス
クではない。

3.は民主党が選挙で下院の過半数を占めたことから実施の可能性
が後退した。しかしそもそも民主党は大きい政府を標榜しているた
め、部分的な財政出動で合意する可能性はある。

下落リスクは信用リスク系のものが多いが以下が主なところだ。

1.中国の住宅バブル崩壊

2.中国のインフラ投資が財政悪化で規模が期待ほどにはならない
場合

3.何らかの理由で北朝鮮に対する制裁が解除され、原料炭価格が
下落する場合

4.地政学的リスクの顕在化

5.米輸入規制強化並びにそれに対する報復

6.ベネズエラをはじめとする新興国のデフォルト


2.に関しては地方財政が悪化していることは確かなようで、財政
状況を悪化させるような財政追加出動よりは金融緩和に舵が切られ
る可能性が高く、その顕在化の可能性も高まっている。

4.は既に顕在化しつつあるが、欧州で与党が野党に敗れ、極右・
極左が台頭することや、Brexitがハードなものになる可能性は2019
年以降の重要なリスクの1つである。

中東についてはイランと米国の対立、イランとサウジの対立継続が
リスク要因だ。イスラエルでの大使館移転の動きの拡大が、中東諸
国を刺激し、イスラエルとアラブ諸国の対立が深まるリスクも無視
できない。

5.は常識的な落としどころを探る動きになる、とみていたが結局、
米中の貿易戦争は開戦となった(その他の地域に対する関税引き上
げはこれとは別に存在)。

関税引き上げは消費税引き上げのような緊縮財政と同様の経済効果
をもたらすため、景気には明らかにマイナスとなる。その結果、中
国国内の鉄鋼製品価格を押し下げ鉄鉱石価格の押し下げ要因となる
だろう。

6.は比較的現実のものとなるかもしれない。中国はベネズエラに
対して622億ドル程度の融資(The Inter-American Dialogue調べ)
をしていると考えられ、これは1,300億ドル程度と言われるベネズ
エラの外貨建て債務(+PDVSA債務)の5割近くに相当する。

仮にデフォルトしたり、政権が倒れた場合、ベネズエラの次期大統
領がこの契約は無効として、IMFや米国に泣きつく可能性はあり、
この場合の中国は債権放棄を余儀なくされる可能性がある。

この場合、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行の負担となり、最終
的には中国政府の負担となる。崩壊の危機に直面しているベネズエ
ラであるが、これ以外の国もデフォルトする可能性はあるため、氷
山の一角ともいえる。今のところベネズエラ問題のみで中国が崩壊
するとみる向きは少ないが、そのリスクは無視できない。


---≪貴金属≫---

金銀価格は堅調な推移となった。原油価格が上昇したことで実質金
利が低下したことが材料となった。

PGMはパラジウムが最高値を更新した。金銀の上昇と株価の上昇、
そもそものファンダメンタルズの強さが背景。

金価格は再び上昇余地を探る動きになると考える。英国のBrexitが
ハードBrexitになる可能性が出てきていること、米国の政府閉鎖の
長期化が懸念されていること、米国の軍事的な政策が強硬になる可
能性があること、米国の中国制裁は本気であり簡単に解除されない
見込みであることが、安全資産需要を高めるため。

また、こうした一連の政策や循環的な景気の減速を受けて米国の利
上げが想定よりも早く打ち止めになるのではないか、との見方が名
目金利を押し下げる一方、原油がOPEC減産などの影響で上昇してお
り、期待インフレ率の上昇圧力となっていることから実質金利が低
下する可能性が高いことも価格を下支えすると考える。

英Brexitはメイ政権の離脱案が否決されたことで先行きが全く分か
らなくなってきた(詳しくは1月16日付の総括を参照)。しかし一
番現実的な解は、「とりあえずBrexitの期限を延期する」であろう。

しかしこの際も、「何を目的に離脱期限を延期するか」が明確でな
い限り、リスク資産の売り要因、安全資産の買い要因となる。なお、
新たなEU離脱案をEU側は交渉する意向はない(他のEU離脱を企図す
る国が、「我々にも同様の措置を」となりEUが瓦解するリスクがあ
るため)。

なお、金価格は実質金利が切り下がってきたため、地政学的リスク
がフルに影響すれば1,400ドル程度までの上昇はありえる状況にな
ってきた(この辺りの分析は後日MRA's Eyeで解説の予定)。

なお、地政学的リスクの影響がないとすれば、実質金利で説明可能
な水準である1,050ドル程度までの下落はあると考える。

銀は、Silver Instituteなどの分析では供給の減少と電気製品向け
の需要増加で供給不足になっていると指摘されているが、それより
は金価格動向や貿易戦争の影響が強く意識され、対金で軟調な推移
となっている。

今後についても金価格が軟調に推移することから水準を切り下げる
動きになると考える。現在の金銀レシオは80に大きなチャートポイ
ントが重なり、底堅い推移となりつつ過去最高水準を維持している。

足元、COMEXの金銀在庫レシオの金銀レシオに対する説明力が高い
が、足元でも金銀在庫レシオは高い水準を維持している。記録的な
水準まで積み上がった銀の取引所在庫の影響で、しばらくはこの80
越えの水準を維持するだろう(詳しくは2018年10月19日付のMRA's
Eyeをご参照下さい)。

金銀レシオが80である前提であれば、地政学的リスクがフルに影響
して1,400ドルになった場合、リスクプレミアムがはげ落ちて1,050
ドルまで下落した場合に対応する銀価格は、17.5ドル、13.1ドルと
なる。

金銀レシオが鉱工業生産などから説明可能な、長期の平均的な水準
である74程度であれば、18.9ドル、14.2ドルとなる。

短期的な価格動向を占う上で参考になる投機筋の売買動向は、
12月18日時点で金のロングが+12,568枚の182,168枚、ショートが
▲2,893枚の106,208枚、銀のロングが+2,887枚の74,023枚、
ショートが▲5,688枚の54,192枚となっている。

なお、政府閉鎖の影響で12月18日以降データは更新されていない。

PGM価格は金銀価格が上昇するため同様に上昇するとみるが、世界
景気が減速するとの見方が強まっていること、世界的に自動車販売
に減速感がみられることで、主用途である自動車向け需要が減速す
るとみられることが上値を押さえると考える。

パラジウムはリースレートが30%を下回り始めており、一時のファ
ンダメンタルズの強さはなくなってきている。おそらく足元の価格
上昇は相場上昇のトレンドにBetした投機の買いによるものと考え
られる。

ただしCFTCデータが米政府機関閉鎖の影響で発表されておらず、実
態は不明だ。

米国の12月の自動車販売は1,750万台(市場予想1,724万台、前月
1,740万台)と小幅に回復している。しかし、世界的な景気の減速
や関税の引き上げなどの影響で2019年の自動車販売は減速する、と
いうのが市場のコンセンサスとなりつつある。


12月の米消費者信頼感は128.1と前月の136.4から大幅に減速した。
6ヵ月以内に自動車を購入すると答えた人の比率も12.7と前月の
13.8から減速している。これは今年の7月以来の低水準だ。

FRBの利上げも限定的ではあるが継続する見込みであり、自動車
メーカーのディーラー向けのインセンティブ負担も重くなることが
予想され、自動車関税引き上げが宣言通り実施されるのであれば、
自動車販売は減速する可能性が高く、PGM価格を下押しすると予想
される。

中国の11月の自動車販売(工場出荷台数)は前年比▲13.9%の254.8
万台(10月▲11.7%の238万台、9月▲11.6%の239万4,100台、
8月▲3.8%の210万3,400台、7月月▲4.0%の188万9,100台)と5ヵ月
連続でマイナス成長となり、同国の耐久財需要が減少していること
が伺える。

弊社は需給面の見通しに関しWPICの見通しを参考にしているが、直
近の見通しでは2018年のプラチナの需給は50万5,000オンスの供給
過剰と、前回発表の29万5,000オンスから供給過剰幅が引き上げら
れた。2019年についても45万5,000オンスの供給過剰が見込まれて
いる。

2019年の自動車向けの触媒需要は前年比▲40万オンスとなる一方、
供給は、南アフリカ(+5.5万オンス)、北米(+4.5万オンス)の増
産がロシアの減産(▲2万オンス)を相殺、供給が+13万オンスとな
ることで需給の緩和感が強まる見込み。

この結果、地上在庫は312万オンス(2018年 266万5,000オン
ス))に増加する見込みで、在庫日数も146.8日(128.4日)と増加
見込みであり、在庫の顕著な増加が価格上昇を抑制することになろ
う。

なお、南アフリカのPGM生産指数は9月時点で108.00(季節調整前)
と過去5年平均を回復した。今の需要動向をみるとよりプラチナ需
給が緩和し、パラジウムの供給は不十分で両者のスプレッドは、需
給面からまた拡大する可能性が出ている。

12月18日現在、CFTCのプラチナポジションはロングが▲1,278枚の
46,981枚、ショートが▲1,674枚の35,594枚、パラジウムはロング
が▲181枚の17,596枚、ショートが+261枚の3,793枚となっている。

なお、政府閉鎖の影響で12月22日以降データは更新されていない。


---≪農産品≫---

シカゴ穀物市場は堅調な推移となった。特段目立った手がかり材料
があったわけではないが、ドル高進行に伴う売り圧力が一巡、テク
ニカルな買戻しによるものと考えられる。

穀物価格は下押し圧力が強まる展開が予想される。2018-2019年の
米穀物生産は豊作が見込まれており、さらにエルニーニョの発生が
北米生産にプラスに作用すると考えられることが背景。また、ブラ
ジルの生産見通しが強気である?

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