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MRA外国為替レポート(9月10日号)

MRA外国為替レポート(9月10日号)

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1.先週の市場総括
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先週のドル円相場は111円ちょうど近辺で始まり、米国経済の堅調
さを示す経済指標や米長期金利に支えられドル高のなか円も全面安
となり週央には111円台後半に上昇。

しかし週末にかけては新興国不安やトランプ大統領の発言で日米通
商問題への警戒感が高まったことから円全面高に。110円台半ばま
でドル安円高が進んだ。

しかし雇用統計は良好な数字となりドルを下支え。週末NYのドル円
相場は111円ちょうど近辺で取引を終えた。

ユーロは対ドルで1.16ちょうど近辺で始まり1.15台半ば〜1.16台半
ばで方向感なく高下。週末のドル高のなか1.15台半ばで取引を終え
た。

ユーロ円相場は128円台後半で始まり週央には一時130円に迫る場面
もあったが、週末にかけて軟調。128円台前半で引け。

米国株は週末にかけてじりじりと売られる展開。貿易問題・米中貿
易摩擦への根強い懸念やハイテク関連株の軟調が全体の足を引っ張
った。

米10年債利回りは2.8%台での低迷から強い経済指標を受けて2.9%ち
ょうど近辺を回復。週末の強い雇用統計で2.94%に上昇して取引を
終えた。

日経平均は22,700円〜800円で始まり上値重く下落基調。米国株が
週を通じて軟調だったことも響いた。週末には、トランプ大統領が
日本との通商交渉に注力する姿勢を示したこと、それを受けた円高
が嫌気され下げ足を速め、一時22,200円割れ。週末の引けは22,300
円近辺。

月曜日の東京市場は111円ちょうど近辺で始まり狭いレンジで上下。
米国市場が休場のため海外市場も動意の薄い展開。111円10銭近辺
でもみ合い引けた。ユーロドル相場も1.1620近辺で横ばい。

日経平均は22,800円近辺で寄り付きじり安。引けは22,700円。この
日、発表されたトルコの消費者物価指数が前年同月比17%の高い上
昇率となり、中央銀行はいかなる対策もとる、と声明を発表した。

火曜日の東京市場のドル円相場は111円10銭近辺で推移。午後に
111円50銭に上昇した。海外市場に入ってもドルはそのまま
111円40銭〜50銭を中心に底固く推移した。

新興国通貨では、この日、南アフリカの4-6月期GDPが▲0.7%と2期
連続でマイナスとなりリセッション(景気後退)入りを示唆。大き
く売られ、新興国不安が広がった。

一方、米国ではISM製造業景気指数(8月)が61.3と予想51.4、前月
58.1を大きく上回る14年ぶりの高水準となった。ドルは全面高。ま
た円は軟調。

ユーロドル相場は1.1540台に下落したあと持ち直し1.1580近辺でも
み合い。ユーロ円相場は128円40銭に下落したあと、129円台に反発
した。米国株はもみ合い小幅安。米長期金利は強い経済指標を受け
て上昇。10年債利回りは2.90%。ドルを支えた。

水曜日の東京市場のドル円相場は朝方一時111円70銭に上昇、その
後は夕方にかけて111円40銭へじり安となり50銭中心にもみ合い、
海外市場でも横ばい。

ユーロドル相場はユーロの上値が重い展開で1.15台後半を中心に上
下したが、引けにかけてはしっかりで1.1630。ユーロ円相場は
128円台後半を中心に上下して海外市場では一時130円近くまで上昇。
引けは129円70銭近辺。

この日も南アフリカを中心に新興国通貨への不安は続いたが、ユー
ロは終盤持ち直した。金融政策正常化への期待感が支え。

米国株は小幅安。まちまち。ダウは反発したが、ハイテク株が弱く、
ナスダック、S&P500は下落。やや新興国不安が高まるも、長期金利
は横ばいで、10年債利回りは2.90%。

木曜日の東京市場のドル円相場は111円50銭近辺で始まり早々に
111円20銭に下落。その後は30銭〜40銭でもみ合い。ユーロ円相場
は129円70銭近辺からじり安。海外市場にかけては129円40銭〜50銭
でもみ合った。

この日米国で発表されたADP雇用報告(8月)は雇用者数前月比
+163千人と低調な数字。小規模企業が採用難に陥っていることが背
景とみられるが、弱い数字にドル安に反応。

ISM非製造業景気指数(8月)は58.5と予想56.8、前月55.7より強い
数字だったがドル安円高の流れは変わらず。その後円は全面高。ト
ランプ大統領が日本との通商交渉における対決を視野、と報じられ
た。

ドル円相場は110円50銭台をつけて引けは70銭近辺。ユーロ円相場
も128円50銭近辺まで下落した。米国株は軟調。米10年債利回りは
2.90%から2.87%へ小幅低下した。

金曜日の東京市場のドル円相場は110円60銭〜70銭で始まり、一時
は前日からの円高の流れに40銭に下落したが、雇用統計を控えて底
固く海外市場にかけてはドル高円安基調。雇用統計発表前には
110円80銭台を回復した。

日経平均は米国株が軟調に推移していることや、トランプ大統領に
よる日米通商問題に注力するとの発言が嫌気され、また円高も手伝
って下げ足を速めた。22,300円割れで始まり一時22,200円。引けは
22,300円。

注目の雇用統計(8月)は、非農業部門雇用者数が前月比+201千人
と予想+190千人よりやや強め。前日の民間調査・ADP雇用報告が弱
めだった反動もあり良好な数字と受け止められた。

とくに注目されたのが平均時給。前月比+0.4%、前年同月比は+2.9%
に上昇が加速。雇用情勢の堅調さが賃金に反映されはじめたとの見
方も。

FRBの強気の景況感や漸進的な利上げスタンスを後押しする数字で、
金利先高感が強まった。米2年債利回りは2.64%から2.70%に上昇。
10年債利回りは2.87%から2.94%に。

ドル金利上昇に支えられてドルは全般に堅調。ドル円相場は
111円20銭に上昇した。ただその後は円高圧力が強まり111円割れ。
週末NYの引けは111円ちょうど近辺。

トランプ大統領は、日本が米国との新たな通商合意に至らなければ
大きな問題となる、と発言。また、中国からの輸入品全てに関税を
賦課する用意がある、と警告した。米国株は貿易摩擦懸念から下落。
金利上昇も嫌気された。


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2.今週の3つの注目ポイント
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1.米国の経済指標、地区連銀経済報告

引き続き堅調な米国経済の動向を確認することとなり、結果的にド
ル円相場を支えるか。

水曜日 生産者物価指数(8月、前年同月比、コア、予想+2.7%)、
ベージュブック
木曜日 消費者物価指数(同、コア、予想+2.4%)
金曜日 小売売上高(同、前月比、予想+0.6%)、輸入物価指数
(同)、ミシガン大学消費者マインド指数(9月、予想96.2)

米国経済は堅調に推移しているとみられるが、ベージュブックでの
当局の判断も強気のままか。9月利上げの判断材料となる報告だが、
ほぼ利上げは確実とみられる。

2.ECB金融政策決定会合

今週木曜日にECB理事会(金融政策決定会合)が開催される。政策
変更は予定されていないが、金融正常化・利上げに向けて何らかの
議論がなされるか。

イタリア国債が売られ(利回り上昇)、トルコ向け債権による欧州
金融機関への影響が取り沙汰されるなか、「慎重な強気」となるの
か、やや警戒モードに傾くか。

ユーロ相場はこのところやや不安定な値動きとなっているが、上昇、
下落、いずれかの当面のトレンドが形成されるきっかけとなるか。

3.トルコGDP、金融政策決定会合

新興国不安は相変わらず根強い。先週は南アフリカランドが2四半
期連続のマイナス成長となったことから景気後退入りを材料に大幅
に下落した。

トルコリラはここにきて持ち直しているが、GDPや金融政策がリラ
安の引き金とならないか。

月曜日に4-6月期GDP(前年同月比、予想+5.4%、前期+7.4%)が発表
され、木曜日に金融政策決定会合(予想、17.75%から20.75%へ政策
金利である1週間レポレートを引き上げ)が開催される。

総じて経済および金融政策に対する信認を回復できるか。あるいは
失望を招くか。後者となればユーロ円相場の下落につながれば、ド
ル円相場も間接的に円高圧力を受ける可能性がある。

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3.今週のMRA's Eye
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ユーロ円相場のリスク〜新興国不安・欧州金融株・日米貿易摩擦

米国のファンダメンタルズは引き続き良好だ。ISM景気指数は製造
業・非製造業ともに極めて強い数字。受注が堅調で全体としては関
税賦課の悪影響を打ち消して企業の景況感はしっかりしている。

雇用に関しても、小規模企業が採用に苦戦する状態。雇用統計では
賃金上昇に加速がみられ、FRBの景気物価強気の見方を後押しした。
9月の利上げは確実な情勢。12月の利上げを見送る理由は見当たら
ない。

低迷していた米長期金利も反発し、先週は上昇傾向。10年債利回り
は2.94%と3%に近づく動きをみせている。こうした状況は引き続き
ドルを支えるとみられる。

一方で相変わらずドル円相場の上値を抑制する要因、円安を抑制す
る要因も散見される。トレンドとして円高となるまでの材料ではな
いが、一時的な円高の動きをもたらす可能性がある。

引き続き貿易摩擦懸念の心理的な影響は大きい。米中間の関税賦
課・報復合戦がエスカレートしつつあることは心配な材料だ。中国
は11月の中間選挙まで実績を上げさせないとのスタンスでトランプ
政権に揺さぶりをかけ、譲歩を引き出そうとしているようにみえる。

一方、トランプ政権は中国からのすべての輸入品に関税を賦課する、
と脅しをかけている。こうした動きは株価、リスク選好にダメージ
をもたらしている。

ドルと円はともに安全通貨としてこうした材料で買われやすいが、
全体としてドル円相場の上値を抑制するか、やや円高圧力が増すか
たちとなる。

加えて、貿易摩擦問題に関しては、先週、日米問題があらたに注目
を浴びはじめた。トランプ大統領は、日本が米国との新たな通商合
意に至らなければ大きな問題になる、と述べた。

中間選挙を前に、中国との交渉で実利が得られなければ、日本との
交渉で実績を上げようと考えてもおかしくない。

当面、為替への影響は心理的なものではあるが、米中貿易摩擦であ
ればそれほどのドル安円高とならない一方、日米間となると円全面
高との思惑につながりやすくドル円相場は軟調となりやすい。

貿易懸念が米中から日米となるならドル円相場は当面、日米間で何
らかの合意が形成されるまで、上値が重いとの見方につながるだろ
う。

この場合、ドルがファンダメンタルズに支えられて堅調なだけ円高
圧力は相殺されるが、ユーロ円相場はより円高による影響が出やす
い、下落しやすいと考えられる。

さらに新興国問題や欧州財政問題、欧州金融株の動向は、欧州発の
リスク回避によりユーロ安円高をもたらす可能性がある。ユーロ円
相場が大きく円高に振れればドル円相場にも下落圧力がかかりやす
い。

中南米、南アフリカ、トルコ、はいずれも欧州金融機関とくに南欧
の金融機関が強いエリアだ。そのなかでイタリアの財政悪化懸念が
浮上。イタリア国債は売られ、金利が上昇し、他の南欧諸国の債券
も売られている。

新興国懸念や南欧諸国の国債が売られている状況は、欧州金融株の
下落基調を長引かせ、ユーロ円相場に下落圧力を強める可能性があ
る。

先週は南アフリカが景気後退局面入りしたことが明らかになり、大
きく通貨安となった。アルゼンチンの動向はなお不透明。

そうしたなか今週はトルコが注目される。月曜日に4-6月期GDPが発
表される。予想は+5%強で前期の7%台から減速するものの水準とし
ては悪くはない。ただ予想を大きく下回る場合は市場の不安が高ま
る可能性がある。

また木曜日にはトルコ中央銀行が政策決定会合を開催する。政策金
利は17.75%から20.75%に引き上げられると予想されているが、着実
な利上げを実施できるか。

大統領による介入、利上げ抑制要求により、中央銀行の独立性が問
われ、通貨の信認が脅かされた。ここで信認が回復できるか、不安
感が新たになるか。後者の場合にはユーロ円相場が下落し、ドル円
相場にも下押し圧力となるので注意を要する。


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◆主要指標
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【対円レート】
ドル :111.03(+0.05)
ユーロ :128.84(▲0.67)
英ポンド :143.918(▲0.46)
豪ドル :79.821(▲0.79)
カナダドル :85.176(▲0.31)
スイスフラン :114.624(+0.11)
ブラジルレアル :27.3811(+0.64)
中国人民元 :16.225(▲0.03)
韓国ウォン(日本円=100) :9.959(+0.01)


【対ドルレート】
ユーロ :1.1602(▲0.007)
英ポンド :1.296(▲0.005)
豪ドル :0.7189(▲0.007)
カナダドル :1.304(+0.006)
スイスフラン :0.9689(▲0.000)
ブラジルレアル :4.0551(▲0.095)
中国人民元 :6.8315(▲0.013)
韓国ウォン :1113.07(+4.33)


【主要国政策金利】
米国 :2.00
ユーロ :0.00
日本 :0.00


【主要国長期金利】
米10年債 :2.86(+0.01)
米2年債 :2.63(▲0.02)
日本10年債利回り :0.11(▲0.00)
日本2年債利回り :0.11(+0.00)
独10年債利回り :0.33(▲0.02)
独2年債利回り :▲0.61(▲0.01)


【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,964.82(▲22.10)
NASDAQ :8,109.54(+21.17)
S&P500 :2,901.52(+0.39)
日経平均株価 :22,865.15(▲4.35)
ドイツ DAX :12,364.06(▲130.18)
インド センセックス :38,645.07(▲45.03)
中国上海総合 :2,725.25(▲12.49)
ブラジル ボベスパ :76,677.53(+273.44)
英国FT250 :20,689.00(▲2.75)
ビットコイン :7044.6(+127.92)

【主要商品価格】
WTI :69.90(▲0.35)
Brent :77.42(▲0.35)
米ガソリン :214.37(+0.02)
米灯油 :224.13(▲0.70)

金 :1203.62(+3.64)
銀 :14.54(▲0.01)
プラチナ :787.81(▲2.16)
パラジウム :982.89(+12.67)
銅 :6020.00(▲51:1C)
アルミニウム :2139.00(▲10:27C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セト
ル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :833.00(+13.50)
シカゴ とうもろこし :351.00(+10.00)
シカゴ小麦 :518.50(+10.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容
赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更
新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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2.MRAからのお知らせ
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■レポート休刊のお知らせ
・諸般の事情により9月11日(火)のレポートは休刊となります。
あらかじめご容赦下さい。


■今後開催予定のセミナー・企画・メディア出演・お知らせ
・9月3日(月)
BSジャパン「日経プラス10(22:00〜23:00)」
新村が出演の予定です。


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